ドイツ語学習者のためのD-Pop入門
はじめに
「ドイツ語の勉強が楽しくなるためのひとつの手段」として、ここでは「ドイツ語で歌われているポップ・ミュージック」(一般的にこれをD-Popと言います)を紹介いたします。好きな歌があれば、メロディーとともに歌詞を暗記してしまうことは普段私たちがよく経験することですが、これをドイツ語学習に応用するのです。気に入ったドイツ語のフレーズを覚えておけば、実際にそれを日常ドイツ語会話で使ってみる、なんてこともできますよ。特に、「愛」という人間の最も関心のあるテーマをドイツ人歌手も好んで歌いますので、ドイツ語で「愛」を語るなんでこともできちゃうわけです。
ところで、かつてNHKテレビ・ドイツ語会話で「D-Popコレクション」というコーナーがありました。このコーナーでは、最新のD-Popを� �介し、ドイツ語学習を楽しくしようという試みがなされていましたが、残念ながら、このコーナーはなくなってしまいました。ちなみに私はこのコーナーを見たいがために、NHKドイツ語会話を見ていました。今回みなさんにお届けする「D-Pop入門」は、この「D-Popコレクション」の心意気を継承し、さらに掘り下げていこうという試みです。
で、これから実際にみなさんにD-Popを紹介していこうと思うのですが、みなさんはどんなD-Pop歌手を知っているのでしょうか。おそらく、まったく知らないのではないのでしょうか。日本に輸入される外国の歌は、残念ながら、どれも英語ばかりですからね。以下では、D-Popを「比較的日本で手に入りやすいD-Pop」「インターネットで手に入るD-Pop」という二つのグループにわけ、紹介していこう� �思います。選曲には、私の「個人的な好み」が介入していることをご了承下さい!
では始めましょう。
比較的日本で手に入りやすいD-Pop(大型CD店で見つかるD-Pop)
1. ネーナ(Nena):『ロックバルーンの軌跡−ベスト・オブ・Nena』(原題:Nena. Die Band) [1992年]
D-Popを語る上で欠かせない存在なのが、このネーナ。彼女の代表曲「ロックバルーンは99」(原題:99 Luftballons. 1982年)は、ドイツ本国のみならず、アメリカや日本でもヒットしました。今でもたまにラジオで聞きますし、英語ヴァージョンはいろいろな人にカヴァーされています。2003年、バンド結成20周年にこれまで出した曲を収めたニューヴァージョン・アルバムを発表し、かなりヒットしました。
ネーナの歌の中で私が好きな曲は「未来へのスパークル」(原題:Irgendwie, irgendwo, irgendwann)。歌詞の中にこんなフレーズがあります。
Im Sturz durch Raum und Zeit 空間と時間のすきまを
Richtung Unendlichkeit 永遠に向かって
Fliegen die Motten in das Licht 蛾が光に向かって飛んでゆく
Genau wie du und ich ちょうど君と僕のように
「蛾が光に向かって飛んでゆく」というフレーズは、おそらくドイツの文豪ゲーテを念頭においています。ゲーテは夏の夜、蛾が炎に魅かれ、その炎の中に飛び込んで身を焦がす姿を目の当たりにして「死して成れ(Stirb und werde! )」という言葉を思いつきます。古くから鳥であれ、蛾であれ、宙を舞うものは魂の比喩。本能の命ずるままに、炎に身をさらしてこそ、魂は変容の果てに新たによみがえるということをゲーテは言いたいのです。(どんな炎に身をさらすかはその人次第です)。
と、まあ、かなり難解なことを考えるゲーテ、それを引用するネーナではありますが、とにかくネーナの曲はすべてお勧めです。他にも『ウーマン・オン・ファイヤー』や『ボンゴ・ガール』、『私小説』というアルバムも気長に探せば手に入ると思います。
ちなみに、先ほど挙げたネーナ最大のヒット曲「ロックバルーンは99」は、カラオケで歌えます。是非、挑戦してください。
2. ジンギスカン(Genghis Khan):『ノン・ストップ・ベスト・ヒッツ』(Non-Stop Best Hits) [2001年]
1970/80年代のディスコブームに乗って登場してきたジンギスカン。彼らの最大のヒット曲「ジンギスカン」(原題:Dschinghis Khan)は、今でも運動会のフォークダンスでよく使われています。最近ではビールのCMで使われていました。「ジン、ジン、ジンギスカーーン♪」という強烈なフレーズを、みなさんも一度は耳にしたことがあるのでは。思いっきりお祭り気分を味わえる曲ですが、これがドイツ語の歌だとは知らなかったのではないでしょうか。
このアルバムには、その他に「めざせモスクワ」(原題:Moskau)、「ハッチ大作戦」(原題:Hadschi Halef Omar)などの有名な曲も入っているので、このアルバムは「買い」です。(私のかすかな記憶では、「ハッチ大作戦」は『ひらけポンキッキ』でよく流れていたような気がするのですが…)
「ジンギスカン」は先ほどの「ロックバルーンは99」と同様にカラオケで歌えます。カラオケで歌えるD-Popはこの二曲だけ!(だと思う…。自信なし)これも是非、挑戦を!
3. ニナ・ハーゲン(Nina Hagen):『ザ・ベスト・オヴ・ニナ・ハーゲン』(14 Friendly Abductions: The Best of Nina Hagen) [1997年]
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