2012年2月1日水曜日

ペットの抜け毛やジュウタンに強い! 三菱の本格サイクロン掃除機「風神」 - ウレぴあ総研

三菱電機が昨年9月に発売したサイクロン式掃除機「風神 TC-ZXA20P」は、国内主要メーカーで唯一、サイクロンボックス部のフィルターを取り去り、遠心力にこだわった本格サイクロンだ。吸引力の持続ときれいな排気というサイクロン掃除機のよさに、手入れの簡単さをプラス。特にジュウタン敷きの部屋が多い家庭や、ペットのいる家庭にとっては頼もしい掃除機だ。今回、このサイクロン掃除機「TC-ZXA20P」の実力を試す機会を得たので、ご報告しよう。

●サイクロン式掃除機は本来「フィルターレス」

三菱電機は「蒸気レス」の炊飯器や、「切れちゃう冷凍」「回るん棚」「動くん棚」を備える冷蔵庫など、"オンリーワン"の機能をもつ製品を数多く出しているメーカーだ。「TC-ZXA20P」も、サイクロン式掃除機の本来の遠心力にこだわった製品になっている。

ダイソン社製掃除機の「吸引力が落ちない」のコマーシャルでサイクロン式掃除機が一般化して、すでに5-6年ほどがたつ。気がつけば、高級掃除機の主流はすっかりサイクロン式になった。サイクロン式は、紙パック式と違って毎回ゴミを捨てるので吸引力が落ちにくく、紙パック代もかからないので経済的。さらに、きれいな排気も売りだ。

紙パック式は、掃除機で吸った空気が紙パックを通ることでゴミを分離し、空気だけを排気する。一方、サイクロン式は掃除機で吸った空気を高速で旋回させ、遠心力でゴミを分離して、空気だけを排気する。この原理なら、サイクロン式の場合、ゴミを分離するサイクロンボックスにはフィルターがいらず、事実、ダイソン社製の製品にフィルターはない。

しかし、ダイソン社製以外でサイクロン式掃除機と名づけられている各社の掃除機は、遠心力だけでは分離しきれない微細なゴミを、最終的にフィルターでキャッチしている。そのため、長期間使うとフィルターが目づまりし、吸引力が落ちてしまう。

「TC-ZXA20P」のサイクロンボックスは二つの旋回部と三つのゴミが溜まるダストカップがあり、綿ゴミなどの「大ゴミ」、砂などの「中ゴミ」、花粉などの「小ゴミ」に分離する。風の入り口では、マイナスイオンで微細なゴミの粒子を大きくまとめて、サイクロンボックスのなかでゴミを遠心分離しやすくしている。

実際に掃除をすると、本当に大きさと重さによってゴミを分離しているのがわかる。また、風が旋回する部分とゴミをためる部分を分けることで排気にゴミの臭いが移りにくい。排気は本体の横、少し高い位置から出て、0.3μm以上の微細なハウスダストも約99.99%以上キャッチする。

実は、私は4年ほど前までサイクロン式掃除機を使っていた。「試しに使ってみよう」と思って買った安モノだったのがよくなかったのか、「TC-ZXA20P」と違い、円形の大型のフィルターがついていた。この掃除機は、カップのゴミを捨てるだけでは吸引力が復活せず、ひんぱんな手入れが必要だった。結局、使うのがいやになり、紙パック式に買い替えた。私のような"サイクロン挫折組"は、だから「TC-ZXA20P」がカタログなどで「フィルターレス」を「画期的」と打ち出している意味がよくわかるのだ。

フィルターレスのサイクロン式掃除機は運転音が大きくなりがちなのだが、「TC-ZXA20P」の運転音は約68dBから約63dB。海外製のサイクロン式掃除機に比べ、ぐんと音が小さい。家電量販店の店頭で、国内主要メーカーのサイクロン式掃除機と比べたときには大きいほうだと感じたが、実際に家で使うと特に気になることはなかった。

●吸込仕事率で計れないパワーの強さ

「TC-ZXA20P」を試した第一印象は、パワフルでしっかりした掃除機だということ。デザインはまるでスポーツカーのようだが、使ってみると見た目よりも硬派で、よけいな機能もなく、「しっかりゴミを取る」ことに集中している印象を受けた。

ヘッドは自走式のパワーブラシ。強力なモーターで、ジュウタンの奥のゴミをかき出す。吸引力はかなり強く、フローリングや畳では抵抗なく軽く進むが、毛足の長いジュウタンでは重く感じるほど吸い込む。しっかり掃除機をかけると、いつもよりジュウタンがすっきりしたのが実感できる。床全体をジュウタン敷きにしている家庭なら、さらに効果がわかるだろう。

これまで使ってきた紙パック式の掃除機でも十分掃除できていると思っていたが、「TC-ZXA20P」の一回の掃除で出るゴミの量には改めてびっくりした。紙パック式では、ふだんは取れたゴミの量を見ることがないせいもあるが、それにしても「えっ、こんなに取れるの!?」と衝撃を受けた。

サイクロン式掃除機の最大の利点は、毎回ゴミを捨てれば、このパワフルな吸引力が落ちないこと。しかし、カタログを見ると、「TC-ZXA20P」の吸込仕事率は約250W-約120Wで、紙パック式掃除機の吸込仕事率と比べると大幅に小さい。同社の紙パック式掃除機「雷神」と比べても、約半分程度だ。そこで、「いくら吸引力が落ちなくても、もともとの吸引力が弱いなら意味がないのでは」という疑問が湧いてくる。

吸込仕事率とは、パワーブラシなどを外して、単純に吸い込む力だけを測るJIS規格。実際にどれだけ掃除できるかを示す数値ではない。「TC-ZXA20P」も、紙パック式の「雷神」とヘッドのつくりが違い、ヘッドの真空度や密着度が高い。それによって、実際の吸引性能を上げているのだ。

吸込仕事率は、紙パック掃除機のなかで比較するなら、ある程度の目安にはなるが、サイクロン式掃除機ではあまり役に立たないと考えていいだろう。主に海外メーカーが提唱している「ゴミ集じん率(ダストピックアップ率)」のほうが、実際の性能を比較しやすいのだが、まだこのゴミ集じん率を公開している国内メーカーは少ない。三菱電機も残念ながら公開していないので、できれば「TC-ZXA20P」のパワフルさは店頭で実際に体感してほしい。

●「節電アシスト」で自動的にパワーをコントロール

このところ、掃除機でも各社が取り組んでいるのが、節電関連の機能だ。「TC-ZXA20P」は、手元グリップ部分に感振センサがあり、物を移動させている間など、ちょっとした掃除の中断を検知して、消費電力を最大10分の1までセーブする。再度動き始めると、自動でパワーを元に戻す。さらに、30秒以上中断すると自動で運転が止まる。このセーブ機能は三菱電機だけの機能だ。

他社製品には、床面の種類やゴミの量を感知して自動的に強度を細かく変える機能をもつ機種もあるが、実際に使ってみると、フローリングに敷いたマットやそこに隣接する畳部屋など、一瞬で通り過ぎてしまうことが多く、感知した頃にはもう別の場所を掃除している……ということもよくある。「動きが止まったらセーブする」という「TC-ZXA20P」の節電方法のほうがわかりやすいし、現実的かもしれない。

操作部には「標準 強/ソフト」「節電 強/ソフト」のボタンがあるが、基本的に「標準」でも「節電」でも「強」のときは約1000W、「ソフト」のときは約500Wで運転する点は変わらないので、ふだんのお掃除は常時「節電」でOK。意識せずに節電できる。

●ペットを飼う家庭に強くオススメしたい「毛がらみ除去機能」

回転ブラシは構造上、髪やペットの毛などがからみつく「毛がらみ」が避けられない。「TC-ZXA20P」がすばらしいのは、回転ブラシのロックを外して横に引くだけで簡単に毛がらみが除去できる「毛がらみ除去機能」を備えていること。

私は長年、ネコを飼ってきたので、過去に毛がらみが原因で回転ブラシが壊れた経験がある。掃除機本体よりも先にパワーブラシが壊れ、これが買い替えの理由になったことも数回あった。いくら表面の毛がらみをハサミで切っても、細かい部分に巻き込んでブラシが回らなくなることもある。結局、回転ブラシを取り外して手入れするのだが、毛がらみを除去するのはもちろん手作業。また、分解したとき、パーツの数が多いと組み立てが大変で、細かいパーツがよくなくなって大騒ぎになった。

その点、「TC-ZXA20P」の「毛がらみ除去機能」は、全体を横に引くだけで丸ごと外せて、再セットも元通り横から入れるだけ。汚れが気になれば、回転ブラシを水で丸洗いもできる。

「風神」シリーズには「TC-ZXA20P」の「自走式パワーブラシ」のほか、「TC-ZXA15S」に搭載する「エアエンジンブラシ」があり、どちらも「毛がらみ除去機能」を備えている。ペットのいる家庭などでしっかり掃除したい場合は、やはりヘッドにモーターを搭載した「自走式パワーブラシ」がおすすめだ。

また「TC-ZXA20P」には、アタッチメントとして、ペットの抜け毛をエチケットブラシで除去する「2WAYキャッチローラー」が付属している。この使い勝手がなかなかいい。コートやソファなど、毎日ペットの抜け毛と格闘している家庭なら、この「2WAYキャッチローラー」で、毎日の抜け毛除去に使うガムテープの消費量も減るだろう。

構造自体は複雑ではないのだが、この便利さは、ペットの毛の掃除に悩む家庭なら「なるほど」と納得するはず。店頭で見る機会があれば、パワフルな本体と同時に、この部分もチェックしてほしい。

●圧縮ゴミは捨てやすく、サイクロンボックスはまるごと水洗いできる

いま私が使っている紙パック式掃除機は、ゴミ捨ては1-2か月に1回と手軽ではあるが、紙パック代は積もり積もればやはり無視できない金額になる。最初は「たかが紙パック……」と思っていたが、メーカー純正の紙パックは1袋700円。各社共通の格安タイプもあるが、紙パック式掃除機の場合は、これがフィルターの一部になるので、質を落とせば排気性能が低下する。我が家は子どもがまだ乳児なので、排気は特に気になるところだ。紙パックの質はどうしても落としたくない。

我が家の紙パック式掃除機を購入してまる4年。計算すると、紙パック代は本体価格の半分ぐらいに達している。こうしてみると、サイクロン式掃除機を選ぶ意味もわかるな、といまさらながら実感している。

さらに、「TC-ZXA20P」のゴミ捨ては、紙パック派の私でも「これならサイクロンに買い替えてもいいな」と思えるほど簡単だ。基本的に、毎回捨てる必要があるのは、サイクロンボックスの一番下のダストカップのゴミだけ。これ外して、ゴミ袋へざっと捨てるだけなのだ。粉塵の吸い込みも思ったより気にならない。風の力である程度ゴミが圧縮されているからだ。

サイクロンボックス自体の手入れは、2か月に1回程度。フィルターがないからこそ、この頻度ですむのだろう。各部はすべて水洗いできるし、フィルターのような乾きにくい部品もない。

●本体は4輪機構で安定感抜群

ふだん使うときに気になる取り回しは、おおむね良好だ。特に本体は4輪機構で安定感が抜群で、ホースを引っ張っても横転することはない。我が家の3輪の掃除機は、電源コードを踏んだりカーブで強引に引っ張ったりするとよく横転するが、「TC-ZXA20P」は同じ場所でも横転しなかった。ただし、ホースの根元から本体に立ち上がる角張った部分に曲がり角がときどきひっかかり、そもそもホースを引っ張っても動かない、という場面はあった。

伸縮パイプは約48-71cmとかなり幅があって、どんな体格の人でも使いやすそう。私の身長は163cmだが、完全に縮めた状態では短く感じたので、少し伸ばして使った。もっと身長の低い人でも、逆に身長の高い人でも、ちょうどいい長さが見つけられそうだ。しっかりした回転ブラシを搭載しているだけに、パワーブラシは少し大きめだが、ソファの下の9cmのすき間にも問題なく入り込めた。ハンドルを横に倒すと、ピッタリ床に密着したまま操作できる。この倒した状態では90°までは曲がらないが、立てた状態でなら左右90°まで軽く曲がる。

付属する「2WAYロングノズル」は、この伸縮パイプに取り付けておけるので、使いやすい。パワーブラシを外して使う「すみずみブラシ」も手元パイプと伸縮パイプの先の2カ所で固定しているので、紛失する心配がないのもいい。

さて、この「TC-ZXA20P」、全体的にみると、特におすすめの使用環境は、イヌやネコなどのペットを室内で飼う家庭や、ジュウタン敷きの家庭。出るゴミの量が多いので、毎回ゴミを捨てられることが利点になる。紙パックがいらないぶん、経済的だ。また、フローリングの床ももちろんしっかり掃除できるが、ジュウタンやカーペットの多い家庭なら「自走式パワーブラシ」のパワフルさをより実感できるだろう。

フィルターレスの本格サイクロン式掃除機「風神 TC-ZXA20P」。使い勝手が悪いと勝手に誤解してきた私のような「食わず嫌い」のユーザーにも、サイクロン式掃除機を再評価させてくれる一台だ。(フリーライター・西村敦子)

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